スタッフのひとりごと

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Diary

2020-08-12 古くて新しい仕事・島田潤一郎さんが沁みる

先日、島田潤一郎さんという方の自伝を、ふらっと立ち寄った本屋さんで手に取りました。なんとなく惹かれて開いただけなのですが、その文体が妙に沁みるのです。
  
いわく、人間関係が苦手で、就職にはことごとく失敗し、兄弟のように育った従兄が事故で亡くなり、なんだかどこにも自分の居場所が無いように感じられ、ある晴れた日、ゆれるカーテンを眺めながら、ふいに自殺したくなった、と、まるで独りごとでも言っているかのように記していました。
  
不器用な自分を必要とする会社はなかった、従兄はいなくなってしまった、彼の記憶もいつかなくなってしまう、自分にはもう居場所はないのかもしれない。
  
でも、自分は働きたいんだ、と。
  
なんでもいいから、必要とされたいんだ、と。
  
それで、彼は亡くなった従兄のお父さんとお母さんに向けて、従兄が生きていた証しとして詩集をつくることを始めるわけです。
空白を埋めるように、詩集をつくるために図書館に通い、製本技術を学び、美しい装丁をしてくれるひとを頼り、生き始めるわけです。
  
ひとりで出版をするために、孤独ながら、不器用ながら「はたらくこと」に向きあう姿に心を打たれるわけです。
  
彼は、詩集を完成させ、ついにお父さんとお母さんに手渡し、そして、ずっとそのままになっていた従兄の洋服を焼くんです。彼の死との決別のために。
  
もうそのシーンが泣けて泣けて。
沁みるんです。
  
そこから10年。
  
ひとり出版社として年に3冊程度の本の復刊(廃版になった本の復刻)をつづけ、いまもひとりで出版を続けているそうです。
  
彼は「たったひとりのためにつくる、美しい本を、(数はすくなくとも)心を通わせあえるひとたちとつくること」に生きる喜びを見出しているそうです。
この仕事が好きだ、大好きだ、と。できるだけ長く続けたいのだ、と。
  
コロナだなんだと変化の激しい毎日で、「新時代に乗り遅れるなよ!」みたいな風潮もあったりなかったりする最近で、
なんだか心がざわざわ忙しいです。みなさんはいかがですか?
  
彼の生き方に、じんわりと大事なことを思い出させてもらっている今日この頃です。
  
おちらといきましょう。
  

(珈琲うどん)

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