スタッフのひとりごと

定住財団スタッフの日々のつぶやきをお届けします。

Diary

2022-03-25 親父の背中

継ぐもんか 気づいてなかった 若い頃 今は憧れ 親父の背中

 

これは平成27年に第1回“農業・農村はかっこいい”和歌募集に応募した和歌です。

 

私が中学生の頃、突然、親父が漁師になると言い出しました。

無口で厳格な親父。家族誰もが反対どころか、意見することさえできませんでした。

思春期の私にとって親父の決断はたいへん衝撃的なものでした。

我が家の将来を案じると同時に、親父が漁師だなんて恥ずかしくて友達に言えませんでした。

正直、カッコ悪いと思いました。

 

私は35歳の時に島根へUターンし、ふるさと島根定住財団に入りました。

これまでに県内各地で活躍されるNPO法人や地域づくり団体の皆さん、農家さんや移住者の方々と出会うことができました。

どなたも元気で、キラキラしていて、逞しい。

過疎化が進んで疲弊した田舎のイメージとは程遠く、悲壮感は全くありません!

暮らしの中に知恵があり、仕事の中に技術がある。いずれも一朝一夕で身に着けられるものではなく、世代を超えて継承されてきたものばかりです。

しかし、担い手不足は深刻で、これらの知恵や技術を次世代へどう受け継ぐのか、さらなる対策が急がれています。

 

そして、それは我が家でも同様です。

昨年、親父が倒れました。初めての入院でした。

このことがきっかけとなり、いよいよ世代交代の時を迎えることとなりました。

 

Uターンして11年半になりますが、手伝いらしい手伝いはほとんどできていません。

それでも休みの合間を縫って手伝いをするのですが、無口な上に口下手な親父は決して丁寧には教えてくれません。まさに親父の背中をみて学ぶしかない!

 

そんな親父の背中がいつしかカッコいいと思うようになりました。

これまでに出会った方々同様に、田舎で生きる逞しさを感じます。

自分にはその技術も経験もありませんが、親父が元気なうちに直接学べることはありがたいことだと思います。そして、このことが一番の恩返しになるんじゃないかと思っています。親父は決して口にはしませんが。

 

フランスの哲学者ナタリー・サルトゥー=ラジュは著書「借りの哲学」でこう言っています。

 

自分の世代だけで、すべてを零からつくりあげることはできないので、あとの世代は前の世代の残したものを利用するしかない。

それがつまり《借り》になるのである。

だが、その《借り》を直接、前の世代に返すことはできないので、前の世代が残してくれたものに新しいものを付け加えて、後の世代に引き渡すことになる。

それが《借り》を返すということだ。

したがって、この《借り》は世代と世代をつなぐ絆にもなる。

 

これまでの「借り」に感謝し、世代を超えて「恩返し」をすること。

それが私たちの使命なのかもしれません。

 

悩みに悩んで出した今回の決断。今思えば7年前にこの和歌を詠んだ時すでに自分でも気づかないうちに覚悟をしていたのかもしれません。

 

当財団でお世話になって11年半。とてもやりがいのある仕事でした。この仕事に関われたことを誇りに思います。

これからは違う立場にはなりますが、島根を少しでも元気にできるように精進したいと思います。

これまで、本当にありがとうございました。

(スマイル (*^-^*)/)

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