定住財団スタッフの日々のつぶやきをお届けします。
最近耳にした「タイパ」という言葉。「タイムパフォーマンス」の略語で、費やした時間に対する成果や満足度の度合いを表す言葉なんだそうです。
特に若い世代の中で、最近、この「タイパ」を重視する方が増えているそうで、動画の倍速視聴等は当たり前の感覚なんだとか。
昭和生まれの自分の若かりし頃を振り返ってみると、「お金はないけど時間と体力はある」とばかりに、安い鈍行列車で乗り継ぐ「青春18きっぷ」を愛用したり、1ページ分ずつ印刷し1冊ずつホッチキス止めする手作り文集を友達と発行したり…と、決して時間効率優先の行動はとっていませんでした。しかし、その中で得た経験の手触りは、今となってはかけがえのない思い出の一部です。
現代の若者と自分自身の若い当時を比較して、決定的に違うと思うのは、周りにあふれる情報の量。SNSの浸透により誰もが情報の発信者になれることで、リアルもフェイクも混在した幾多の情報がひっきりなしに生まれ、その差配に振り回されることもあります。
そうした状況の中では、「何に時間を費やすか」の判断が、時として「そこにいくら支払うか」の判断以上に重い意味を持つことは理解できるように思います。
ただし、「倍速する中で失うものもある」という観点も、本当に豊かな時間を得ようと思った時には大切な視点のように感じます。「無音や行間の中で表現されるもの」の味わいは、倍速・省略する過程では体験できません。
「効率を求めない中の豊かさ」、さらに言えば、「効率を求めないからこその豊かさ」が、確かにそこにあった。……というのが、昔々の思い出を手繰り寄せる中で思う実感です。
(でんでんむし)